第6話　

　その夜、私は細井涼太と一緒に食事をする約束をしていた。

　彼との会話はとても楽しく、彼と過ごす毎日は本当に心が軽くなる。

　食事が終わった後、彼が映画を見に行こうと言い出した。私は少しぼんやりしていて、最後に映画館に行ったのがいつだったかさえ覚えていなかった。

　見たのはコメディ映画で、映画館の中で私はまるで馬鹿みたいに笑っていた。

　こんなに楽しい日は本当に久しぶりだった。

　だから、彼が家まで送ってくれると言ったとき、私は断らなかった。

　でも、まさか菅野健一が私の家の前に現れるとは思わなかった。

　私の隣にいる細井涼太を見たとき、菅野健一は明らかに驚いた顔をしていた。

　私は何も説明するつもりはなかった。

　細井涼太に軽く頷いて、先に帰るように伝えた。

　彼は余計なことを聞かず、恐らく私の私事だと思ったのか、静かに頷いてその場を離れた。

　「彼は誰なんだ？」菅野健一は私の手を掴み、問い詰めてきた。

　「あなたには知る権利はないわ！」私は彼の手を振り払った。

　「たった数日で、もう新しい相手を見つけたのか？」彼の声には怒りが滲んでいた。

　私は呆れて、「菅野健一、私ははっきり言ったはずよ。離婚したいの。早くサインして」と冷たく言い放った。

　彼は唇を動かし、苦笑いしながら言った。「聞いたか？会社の資金がもう底をついたんだ」

　私は彼を見つめ、何も言わなかった。

　「菅野健一、私はもう疲れたの。今はただ、あなたと離婚したいだけ」

　「もしサインしないなら、私は弁護士を雇って訴えるわ！」

　「違うんだ、誤解しているんだ。高山奈々を愛していたわけじゃないんだ。彼女が私たちの結婚が原因で鬱になったから、ただ彼女の面倒を見ていただけなんだ。それに、今はもう彼女とは何の関係もない！」彼は懇願するように続けた。

　「美緒、もう彼女を愛していないんだ。今、愛しているのは君なんだ！」

　私は彼の手を振り払って、笑いながら言った。「私は5年間もあなたを愛してきたのよ。でも、今になってやっと私を愛し始めるの？」

　「菅野健一、サインして。でないと、私はあなたを軽蔑してしまうわ」

　彼の顔は真っ青になった。

　「君も知っているだろう。彼女とは幼なじみで、それ以上のことはないんだ。しかも、彼女の本性が今になって分かったんだ。彼女は外部の人